アカペラ

アカペラ (新潮文庫)

アカペラ (新潮文庫)

自分的には山本文緒作品は現実のちょっと斜め上をいく設定が多いと思っていて、それらをきちんと着地させるのもうまくていつも感心させられる。三つの作品のうちどれもよかったけど、個人的には『ソリチュード』がいちばんよかった。人間ってのは勝手な生き物で、立場によってはまったく見えてくるものが違ってくる。守るものができることもあるし、それらに危害を加えるものを憎むことだってある。父親の気持ちがわかることによって、主人公の春一が変わっていく様子がとても軽やかに描かれていて、読んでいて電車の中でちょっと涙ぐんでしまった。すごくよかった。